島暮らしのよろこび、つくり手としてのこだわり

西方農園/柑橘農家

西方宏樹(にしかた・ひろき)さん

2017.08.08

大三島で育ち、一度はIT系のサラリーマンとして都会に出た西方宏樹さん。「実家にいるときは苦労としか思わなかった」という柑橘栽培に、いま情熱を傾けている理由とは? プライベートでは星空撮影を趣味とする西方さんに、大三島の魅力と併せて語っていただきました。
 
――栽培している柑橘の種類が、とてもたくさんありますね。温州みかんのほかにも、せとか、不知火(しらぬい)、甘平(かんぺい)、はるみ、はれひめ、はっさく……など14種類!?それぞれおいしく育てるコツは違うのですか?
 
はい、品種の特性に合わせて工夫しています。収穫時期によっても違いますね。例えば、高級みかんとして知られる「せとか」。柑橘の中には、食べごろより早く収穫した後に倉庫などで「追熟」させるものもありますが、せとかは違います。
 
1M5A1541 ▲枝からもぎ取り、果皮をむいた瞬間に濃厚な香りに包まれる。「せとか」の由来は「瀬戸の香り」。瀬戸内地方でよく育つことと、香りの良さから来ているとか。
 
せとかを甘くておいしく熟させるには、冬の間、枝につけたまま完熟させる「越冬完熟」という手法を使うのです。しかしそこには、霜や野鳥による被害を受けたり、棘で傷ついてしまったりと、かなりのリスクがつきまといます。
 
なので、西方農園ではサニーセブン(という白い大きな布)で木全体を覆ったり、果実一つひとつに黒い袋をかぶせたりして保護しています。日々の観察も怠りません。
 
1M5A1550 ▲一つひとつ丁寧に袋をかぶせていく。こういった手間や愛情の積み重ねが、柑橘のおいしさをかたちづくっていく。
 
1M5A1585 ▲せとかの棘は大きく鋭い。「風の強い日など、これに刺さって果実が傷つかないよう丹念に手入れをします」と西方さん。
 
―― 都会でのサラリーマン生活から、故郷の大三島で家業の柑橘農家を継がれたのには、何か理由があったのですか?
 
7年前までは、IT関係の営業をしていたのですが、なんとなく「自分はモノをつくりたいんだな」という自覚はありました。でも、実家で子供時代から見てきた柑橘栽培は、辛いとか苦労という印象しか持てなかったんですよ(苦笑)。
 
それが一変したのは、会社での出来事。実家から送ってもらった「紅まどんな」という品種を事務所に持って行ったら、同僚や上司たちが「これが本当にみかん!?信じられないぐらいおいしい!!」と喜ばれて大評判だったんです。みかんの明るい将来が見えた……というか、「これで勝負できる!」と確信を持ちました。
 
その後2010年に就農しましたが、サラリーマン時代に得た「お客様に喜んでいただくための努力」とそのアピール方法は、今現在の柑橘栽培の取り組み方やホームページでの発信方法にとても役立っています。
 
1M5A1600 ▲柑橘栽培の大ベテランである両親と共に、農家への道を力強く歩む。
 
――島内で西方さんと言えば、道の駅などで販売されている柑橘ソルベでも知られています。ソルベ開発への想いがあれば教えてください。
 
みかんの旬は10月~5月ごろなので、オフシーズンである夏でもみなさんに喜んでいただける商品をつくりたかったんです。開発にあたっては、大三島2カ所にある道の駅の女性スタッフや、親戚などに何度も試食をしてもらいレシピをつくっていきました。
 
正直な話、「これですごく儲かる!」ということはないんですよ(笑)。でも、「ソルベがおいしかったから」と冬の柑橘をお求めくださるお客さんもいらっしゃるので、私たちとみなさんをつないでくれる大事な存在になっています。
 
1M5A1619 ▲コクのある滑らかな舌触りと、果実をそのまま閉じ込めたような香りと甘さがたまらない「西方農園の美味しいソルベ」。
 
1M5A1586_fx ▲穏やかな瀬戸内海からの風も、おいしいみかんが育つ大切な要素。
 
――プライベートでは、星空撮影がご趣味なんですね。大三島ならではの撮影スポットはありますか?
 
私が星空の撮影で大切にしているのは、夜空に輝く星々を切り撮るだけではく、見慣れた日常の風景と一緒にフレーミングすることです。都会では街明りで難しいですが、ここ大三島はそんな星空を撮影できるすばらしいところです。
 
20160513mikanhana-s
 ▲息をのむような、みかんの花と天の川の共演。(2016年5月13日 西方さん撮影)
 西方さんの星空写真は、インスタグラム(@hiroki.nishikata)でも見られる。
 
普段はなかなか忙しくて撮影場所の開拓ができないのですが、島では日常でもこんな美しい風景に出会えます。いつか作品が溜まったら、作品展なんてできたら面白そうですね。
 
1M5A1670 ▲作業所のおしゃれな事務スペースにて。
 
「大三島の魅力は移住者さんのほうが知っていますよ」と謙遜しつつも、西方さんが撮る夜景の作品とソルベには、言葉ではない島の魅力がぎっしり詰まっていました。西方さん、ありがとうございます!