島暮らしのよろこび、つくり手としてのこだわり

もり自然農園/野菜・柑橘農家

森聡さん、まゆみさん

2016.09.16

初めて会ったときから、自然体。いつも気さくな森聡さん・まゆみさん夫婦は、2011年5月に東京のサラリーマン生活を卒業して、大三島で農家になりました。

農薬や化学肥料を使わず、自然の栄養だけで育った野菜はとてもジューシー。「おいしそうなものはどんどん植えて試してみたい」と、少年のように目を輝かせる森さんの畑にお邪魔しました。

 

――どうして大三島で農家になろうと思われたのですか?

 

夫婦して昔から「田舎で暮らしたい」という想いがありました。できれば海の近くで暖かい土地がいいなと。はじめは、島は不便なところというイメージがあったので、移住先の選択肢にはなかったんです。しかし、大三島に出会って、気持ちが変わりました。ここには「本当の田舎」の素晴らしい景色が残っているのにも関わらず、しまなみ海道で本州や四国と橋でつながっています。ここなら実家の両親に何かあっても、駆け付けてあげられるという安心感も湧きました。

2009年から何度も島を訪れていましたが、この島を代表する有機農家・越智資行さんの誘いもあって、移り住むことにしました。

 

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――とてもたくさんの種類の野菜が育っていますね!

 

野菜畑は3反(900坪)あるのですが、夏と冬あわせて50~60種類以上の野菜を栽培しています。おいしそうだなと思ったら、まずは植えて試してみたくなるんですよ。

今年のヒットは「こどもピーマン」!大きくなる前の未熟なモノという意味ではなく、そういう品種なんです。(笑)肉厚でピーマンらしい風味を残しながら、苦味がほとんどなく、とにかくおいしい。これは来年以降も継続してつくっていきたいです。京野菜である賀茂ナスも、とてもいい仕上がりでした。

 

1M5A8387★とれたての「こどもピーマン」を生でかじると、あふれ出てくる水分にびっくり!

 

――肥料にはどういう物を使っているのですか?

 

有機物を発酵させてつくる「ぼかし肥料」を使っていますが、動物性のもの(骨や内臓など)はあまり使わず、植物性のもの(草刈りした野草など)を利用しています。動物性は即効性があるのですが、養分が濃く、虫がわいてしまうことがあるのです。その点植物性は、効き目が穏やかで、虫もつきにくい。作物だけでなく、土壌自体もやさしくゆっくり育てていくことができます。

 

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――柑橘も栽培されているのですか?

 

はい。みなさんお馴染みの温州みかん(早生・極早生・中手など)から、はっさく、デコポン、レモン、かんぺい、なつみなど、昔から愛されてきた品種が多いです。加工品としてジュースも販売しています。

みかんの皮は捨ててしまいがちですが、クエン酸を含んでいるので、台所のシンクを磨くとぴかぴかになりますよ。

 

――夏は野菜、冬は柑橘という二足のわらじで通年忙しいと思いますが、島暮らしでの息抜きや楽しみは何ですか?

 

(聡さん)マラソンですね。毎朝5時に起きて多々羅大橋を往復します。パノラマで広がる海の上を走るのは爽快ですよ。他に、自転車で走ったり、朝の散歩を楽しむ人もいますね。全長が約1.7キロなので、仕事の前に走るにはちょうどいい距離です。

毎年2月に行われる「愛媛マラソン」にも参加しているので、その前になると島内を走りこみます。宗方(むなかた)から出走(ではしり)にかけての眺めは、穏やかな瀬戸内海を一望できてオススメです。

 

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多々羅大橋での早朝ラン。海の上を駆け抜ける爽快感は格別

 

(まゆみさん)愛犬のチャーシューやジャージャーと触れ合うことです。私はパグが大好きなので、パグ仲間の「オミシマコーヒー焙煎所」さんに遊びに行くのも楽しみのひとつ。愛媛県には「パグ犬愛好会」もあって、結束が強いんですよ。(笑)

 

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――「島で農業をやってみたい」という人にメッセージをお願いします。

 

最初は、技術や知識がなくても心配要りません。私は、先ほどお話した越智資行さんの下で2年間研修を受けてから独立しました。その他にも、この島には「農業の先生」がたくさんいるので安心してください。

森を畑として開墾したときはさすがに根気を必要としましたが、木々に育まれたふかふかの土壌は、今ではおいしい野菜をつくるのに欠かせない大切な宝物です。

就農するならお金はある程度貯めてくることを勧めますが、まずは島の自然が持つ力を感じに遊びに来てみるのもいいと思いますよ。

 

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