島暮らしのよろこび、つくり手としてのこだわり
1 plus 7(いちぷらすなな)/木工作家
高橋一郎さん
2016.03.21
“大三島で何かをはじめたい”という人たちが、どういうわけか引き寄せられるように集まる木工房カフェ「1 plus 7」。毎月1度は島内を中心とした若い作り手たちによるマルシェが開かれ、今や島を代表するスポットのひとつとなっています。
そんな1 plus 7の主である“イチローさん”こと高橋一郎さん自身も、古民家などの廃材に新しい命を吹き込む木工作家です。イチローさんが暮らしの中で大切にしていることとは、いったい何なのでしょうか。
――かわいいお家に柱のようなものが立っていますが、これは何ですか?
掃除用のモップを収納する「モップハウス」です。柱に見えるのはモップの柄の部分ですね。ワークショップのときなどに作っていますが、すべて古民家などから出た廃材を素材にしています。
――廃材の魅力とは、どういったところにあるのでしょうか?
何といっても、使い込まれた“味”があることですね。実は廃材には、見えないところに釘の破片が食い込んでいたりするので、本当なら新品のほうが加工はラクなんです。でも、昔の建材には今では考えられないような貴重な材質も多く、抗えない魅力がありますね。
僕自身がもともと古民家に触るのが好きなので、解体や修復中に古い柱やガラス戸などを見ると、どうしても使いたくなるんですよ。だから、ほら、よく見ると小物入れの金具も1つ1つ違うでしょ? 制作をしている工房の窓にも、古い船のドアなどをいかしています。
余った木材は、薪風呂や薪ストーブにくべて最後まで使い切ります。「自然に近い、無駄のない生活」をずっと実践していきたいと思っているんです。
――大三島でお気に入りの場所は?
この工房がある甘崎エリアです。静かで海の眺めもとてもいいですし、10年ほど前にしまなみ海道ができて人の流れにも変化が出てきました。
うちのカフェは道路から一段下がったところにあって中庭でくつろぐことができるのですが、オープンしたきっかけも「ここからサイクリストたちが颯爽と通るのを見上げて、眺めを楽しむのもいいよねぇ」というお客さんのつぶやきが原点にもなっています。
――カフェ兼ご自宅も、ご夫婦で改築されたとか!?
はい。ここはもともと妻の生家だったのですが、愛犬を介護するために戻ってきてから二人で何年かかけて改装をしました。大きな部分は僕が、簡単な棚を作ったり漆喰を塗ったりする作業は妻が「これなら女性でもできる」と自分専用の道具まで買いそろえてがんばっていました。材料はもちろん廃材です。
そのうちに人が集まるようになって手狭になり、キッチンは増築しました。実は今も「庭に屋根をつけてみたい」など、構想は色々浮かんでいるんですよ。
――島暮らしで、何をしているときが一番楽しいですか?
若い人や“何か新しいことをはじめよう”という人たちと話したり、彼らとくだらない冗談で笑い合ったりしているときですかね。移住者さんも多いですよ。みんなの家で作った料理を持ち寄って、しょっちゅうここで宴会をしているのですが、毎回色々な人が遊びに来てそれも楽しいですね。
僕は気を遣うのも遣われるのも苦手なので、年齢関係なく対等な立場でモノを言える関係をとても居心地よく感じています。
――今後の夢はありますか?
大三島を「楽しい島」にしていきたいです。若い人たちが元気に活動していて、地元の人もそれを見て変化する――という循環が増えたらいいですね。もともとの島の魅力もたくさんあるので、いいものは残しつつ、新しい風を呼び込んでいきたいと思っています。
木製レジスター
古民家などの廃材に、新たな命を吹き込んだ木製レジスター。玄関での小物入れやイベント出店時の釣銭入れとして、クチコミで人気を集めています。小物入れは上下二段式ですが、上蓋にはちょうどスマホや小型の電卓が乗せられるというさりげない気配りが。古い木材